○BRNの魔法とシステムデザイン

○TRSとBRNの魔法 - 徒然盤戯メモにコメントをいただきました。
ありがとうございます。非常に参考になりました。

BRNの魔法のリスクとリターン

今回はいただいたコメントから始めることにする。

knsr 朱鷺田さんのゲーム世界は「魔法使うのに命がけ」のイメージがある(『深淵』とか、旧ブルーローズも適切な運命で指定されないと使えなかった)ので、そんなもんかと思ってた。 2010/01/25

DocSeri 世界設定との絡みの問題でもある。魔法を気軽に使える技術として捉えるのか、制御困難な力を用いた危険な儀式とするのか。後者ならばTRSでの運用が相応しい。 2010/01/25

crea555 魔法が拳銃並みに簡単に使えるなら、拳銃使う意味が無いじゃない、ってことなのだろうなあ。あと、邪教の儀式を中断したりとかしたいよね、とか? 銃と魔法の世界じゃない、ってことかしらん。 2010/01/25

三者とも魔法そのものの設定を言及している点に注目。(それはそうと『深淵』も同じデザイナーだったことに今さら気付いたw)

knsr氏、DocSeri氏のコメントより、BRNの魔法には「命がけ」や「制御困難な力」といったイメージがある様子。両氏のコメントからBRNの魔法には「扱いづらい力」「危険な力」というコンセプトがあることは伺える。しかしこれだけでは「ドラマチックな展開」や「スリルやプレッシャーの楽しみ」には必ずしもつながらない。そもそも魔法を使う必然性がない。
crea555氏の「邪教の儀式を中断したり」は運用例の一つとして注目。「中断する」ということは魔法を使う側ではないということ。「誰が中断させるのか」は「邪教の儀式」であることからPCと推測。この点は以下の記事からも推測可能。

神田川 : だからそれをやるゲームなんだってばよ。嵐の中にセスナで突っ込んで空中に浮かぶ城を発見してサイボーグ兵士の銃弾をかいくぐり妖術師の儀式を妨害して武侠をだまくらかして宇宙人と遭遇しつつも危険なオーパーツを封印し、最後は崩れる遺跡から脱出するゲームなんだよ。
ブルーローズネクサスレビュー : 私事総論

この運用例ではBRNの魔法をNPCスキルと扱っている。「邪教の儀式」は「中断すべきもの」としてゲームに設定され、「妖術師の儀式を妨害する」という「ドラマチックな展開」を支援する。このときTRSはリミット制などのルールにより「スリルやプレッシャーの楽しみ」を演出する。(儀式に関する情報があるときはカウントダウン型、無いときはカウントアップ型か?)

ただ、ここでもやはり必然性が薄いように思う。PCスキルにせよNPCスキルにせよ、「ドラマチックな展開」や「スリルやプレッシャーの楽しみ」を満たすためには、魔法の影響力が大きなものでなければ意味がない。たとえば一日がかりの儀式の結果が「その日の天気が分かる」だけだとして、そんな儀式を命がけで行う必要も、命がけで阻止する必要も無い。ハイリスク・ハイリターンである必要がある。コメントをくれた方々も、それは当然のこととして書かれたと思う。

スリルやプレッシャーは、ハイリスク・ハイリターンなゲームで最も大きな楽しみを生む。ハイリスク・ローリターンではモチベーションが上がらない。ローリスク・ハイリターンならプレイヤーは真剣にならない。リスクとして支払うコストが何度も支払えるものなら、リトライすれば済む。
BRNの魔法はハイリスク(「命がけ」で「制御困難」)と理解されている様子。あとはハイリターンが成立すれば、「スリルやプレッシャーの楽しみ」の条件を充たせる。

最終兵器としての魔法

それとは別に、魔法の威力が絶大なものであるなら、

「PCがスプリガンのマックス小隊っぽい立ち位置の面々をやって、NPC様に鮮やかに解決してもらう」というフラストレーションたまる一方な昔の駄目なスタイルまんま。ガンドッグゼロに比べると確かにPCは強くなるけれど、NPCはさらに強くなっているので話にならない。

シナリオ読むと「クライマックスはまともに戦うとPCの敗北確定だからなんとかシナリオ読むと「クライマックスはまともに戦うとPCの敗北確定だからなんとかNPCの協力をこぎつけよう!」みたいにしか作られてないしなぁ。
今更ルールブック確認中 - ワタシノ地球語ハワカリニクイ

といった状況を打破するツールになるかもしれない。

TRSに他の価値はないか?

前回「TRSを使うならデザインコンセプトに沿うべきだ」としたが、あるいはこのデザイナーはTRSに別の利用価値を見出した可能性も有る。そうであるなら、それはどのような価値なのか。

世界表現としてのルール

DocSeri氏のコメントから。後輩は「デザインコンセプトのひとつに、ゲーム世界を表現する数式としてのシステムがある」と言う。このときスキルは世界を網羅するために作成され、プレイアビリティは二の次となる。プレイヤーは遊び方にあったスキルを検出し、各自が取捨選択を行わなければならない。
こうしたコンセプトのゲームは遊びの幅が広がる可能性があり、長期的に遊べるポテンシャルを持つ。反面、プレイヤーはどのように遊べば楽しめるのかを知るための初期投資、戦術研究が必須となる。その世界で何がしたいかをイメージさせるインストが重要。