◎ハンターズムーンを遊んできた
ホラーアクションRPG ハンターズ・ムーン(Role&Roll Books) (Role & Roll Books)
- 作者: 齋藤高吉,冒険企画局
- 出版社/メーカー: 新紀元社
- 発売日: 2010/02/13
- メディア: 新書
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友人がえらくプッシュしていた「サイコロ・フィクション」シリーズ。
その最新作の『ハンターズムーン』を昨日、遊んできた。
以下、簡単な感想。
「サイコロを振ること自体が楽しい」
- ダイスロールが必ずシチュエーションに直結している
- ダイスロールが全てクリティカルな価値を持つ
基本的に無駄なダイスロールというものがない。成功はチャンスにつながっているし、失敗はピンチに直結している。昔のTRPGのように、「判定してもしなくても大して変わらない」ということがない。またダイスロールの基準になる特技や、戦場となるロケーション(戦闘中に使用するオプションルールのパック)もダイスで決めるので、一振りに緊張感がある。
ダイスロールの目標値が、2D6で5+αというのも絶妙なバランス。戦闘での「攻撃」成功率は83.3%と非常に高く、ダイス目の偏りで戦闘が短調になる確率は低い。ダメコンの「防御」判定で、リソースマネジメントを楽しむ設計。ただし部位ダメージで特技が使えなくなると、ワンサイドゲームになる可能性が一気に上がるので、モノビーストに部位ダメージを受けたときの部位決定ロールは生きた心地がしないw
逆に追跡フェイズの判定は、同じ行動について複数のPCのうち誰かが成功すれば良いので、成功率は低め(運が良ければ83.3%、でも普通は58.3〜16.7%程度)になるようになっている。早めに誰かが成功すれば、「練習」で有利になれる(可能性がある)のも、ダイスロールに思わず力が入る設計になっている。
「【命題:情報はPCが管理する】の完成形?」
- 情報はダイスロールの成果である
- 情報は全てゲームクリアに重要な価値を持つ
このゲームで重要な情報は「弱点」「習性」「特技」「アビリティ」の4つ。そのうち「弱点」と「習性」は、追跡フェイズにそれぞれ「弱点調査」と「習性調査」を行えば分かる。「特技」と「アビリティ」は戦闘フェイズで自然と明らかになっていく。全て「PCの経験を通して」しか知ることが出来ない。
追跡フェイズの「弱点調査」と「習性調査」で得られる「弱点」と「習性」は、それぞれ「モノビーストに高確率で止めをさせるようにする」ことと、「モノビーストの手数を減らすための戦術を組み立てる」ために、非常に重要となる。前者は部位ダメージのダイスロールに力が入る原因となり、後者もセッション毎に異なる戦術を立てたり、リソースマネジメントに関わるダイスロールで一喜一憂するきっかけを作る設計。
「【命題:プレイヤーとPCの能力の分離】の完成形?」
- プレイヤーの知識と得られる情報が分離しているのでプレイヤーの知識はゲームに影響しない
- プレイヤーとPCを分けることでプレイヤーとPCがイコールになる不思議w
プレイヤーはPCの行動によってのみ必要な情報を入手する。入手される情報はプレイヤーの知識と関係なく、完全にゲームに特化された情報のみである。またドライでデジタルなルール(ex.同じアイテムを2個持てない)が、プレイヤーの知識がゲームに影響することを予防している。
驚くべきことに、『ハンターズムーン』ではPCの知識がデータ化されていない。頭脳労働に関係しそうな特技も「考える」と「憶える」の二つだけで、これらはプレイヤーの知識と衝突しない。PCの行動をキャラデータで判定出来ないから、プレイヤーが考えなければならない。
これまでのTRPGでも、PCを独立した一個人としたいプレイヤーたちは「PCとプレイヤーの能力は別だ」と言っていた。しかし知識系技能の中に、戦闘中の戦術立案に関する技能が無いことで、それはダブルスタンダードだ(なんとか知識については技能や能力値に拠れというのに、戦闘中だけはプレイヤーの頭脳全開で判断している)という反論もあった。こうした問題は、TRPG以外のボードゲームでは特に取り沙汰されることがなかった(PCとプレイヤーが同じなのは当然)が、『ハンターズムーン』はTRPGをボードゲームライクにすることで、問題を解決したようだ。